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LISTEN,WATCH,COOK and EAT

エンタテイメント業界の片隅から見たもの、聴いたもの、食べたもの

「松尾潔のメロウな日々」を読んだ!

文章が巧いとか下手とかいうことは、スポーツで言うとサッカーがうまいとか足が速いとかと同じだと思っています。音楽で言うと歌がうまいとか楽器がうまいというのと同義であると。努力でもちろんある程度の習熟や成長はもちろんありますが、基本才能プラス努力だと思います。

小説家でいうと売れている人はやはり例外なく文章が巧い。たとえば村上春樹さんの新作はテーマだったり設定だったりどんどん自分の志向や興味から離れてしまっているのですが、文章が見事なのでなぜか読んでしまいます。古くは夏目漱石も題材や感情移入が無くても文章が見事なのでついついページが進みます。歌がうまい人がどうでもいい歌詞を歌っていても名曲みたいな話です。まあ、個人的な嗜好も入っているとは思いますが。

ミュージシャンの人には文章が巧い人が多いのと僕にとって好きな文章を書かれる人が多い気がします。歌と同じで「あの人の歌が好き。」みたいな感じで「あの人の文章が好き。」みたいな。

ミュージシャンの方では古くは早川義夫さん。大槻ケンヂさんや小西康陽さんや最近では西寺郷太さんは本当に文章が巧い。

歌が上手な人がどうでもいいことを歌っていてもいいように、予備知識がなくても、専門的はことを書いていても読ませる人が本当に文章が巧い人だと思います。JAZZやヒチコックに造詣が無くても植草甚一さんの本は面白いし、喜劇人や映画人に詳しくなくても小林信彦さんの週刊文春の連載は毎回楽しみです。音楽関連だと安田謙一さんはまさに知識がなくても文章のナビゲートだけで楽しませてくれます。

さて、松尾潔さんの初めての音楽書という「松尾潔のメロウな日々」を読みました。ブラックミュージック関しては正直でてくる固有名詞の7割くらいはなんとか知っていて、、で、音を聴いたことがあったりCDを持っていてもなかなかリアルではないのが正直なところなのですが、まさに文章力だけで一気に最後まで読んでしまいました。

中段にさすがの僕も愛着と多少の知識はあるジェームス・ブラウンとクインシー・ジョーンズのくだりは実に素敵な見事なエピソードで自分的なクライマックスとしては最高でした。いまからでももちろんの遅くはないのですが、若いころにこの本に出会っていたらまた僕のミュージックライフもより彩深いものになったであろうと思います。






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大滝詠一さん関連リリースラッシュ。

年末にひょんなことから大滝詠一さん(大瀧詠一さん)のブームが再燃しましていろいろなものを聴きかえしたり、読みかえしたり、ちょびっと見かえしたり(?)していました。そんなさなか12月31日突然の訃報が飛び込んできました。

追悼のラジオも本日の「元春レディオショー」が追悼特集の最終回。ニッポン放送やらTFM、インターFMの追悼番組もひと段落のところにきわめつけで本日よりラジオ日本にて伝説のラジオプログラム「ゴーゴーナイアガラ」が5夜にわたって再放送されます。

大滝さんや山下達郎さんはテレビ出演をしないのでなんだか露出がすくなくミステリアスな印象があるかもしれませんが、ラジオ媒体や活字媒体にはかなり濃い内容で何度も何度も登場していますので実は資料的な価値のある発言や記述は、凡百のアーティストよりぜんぜんたくさん残っています。

テレビこそがメディアの王道であるという観点ではうかがい知れない貴重なアーカイヴがちゃんと残されているのです。

ラジオに続いてはやはりタイムラグがあるのがしょうがない雑誌書籍のリリースラッシュが続きます。

自分自身の備忘録もかねて列挙したいと思います。

レコードコレクターズ2014年3月号
1979年まで「ロンバケ」までの大滝さんの足跡です。次号はそれ以降ということになります。雑誌自体が丁寧なアーカーブ雑誌ですので読み応えは十分です。即効買いました。

Sound&Recording Magazine2014年3月号
やや専門的な音楽専門誌。おもにレコーディングまわりやエンジニア、プロデューサー、機材関係の雑誌です。今後あるのかもしれませんがアーカイヴ的な記事も少ないし、専門誌ですので値も張るので(とは言いながらしょっちゅう買っていますが)スルーしようかと思いましたが、巻頭が充実の「佐久間正英さん」の特集ですので購入しようと思います。

Sound Designer2014年3月号
上記「サンレコ」に比べるとかなりライトで踏み込みも甘い専門誌と一般誌の間くらいの雑誌ですので巻頭とは言えスルーしようかと思ってのですが「吉田保さん」の機材やマイキングに関するインタビューがあるので購入しようと思います。

ケトルVol.17
前号が「タモリさん」の特集。大判のサブカル誌です。特集はいろんな人が語る大滝さんということで、本屋にならんだらチェックしてみようと思います。

そして、ここからはムックであったり書籍の復刊と増補版です。

増補新版「大滝詠一」(文藝別冊
一冊一人特集の名物ムックです。このシリーズはファンで何冊も買ってよんでいます。大滝さんは初版と増補版の両方持っています。先日増補版がまんま帯だけつけて再販されました。

増補改訂版「オールアバウトナイアガラ」(白夜書房
5000円近くするまさに決定版ともいえる1冊です。ながらく絶版でかなりの高値でオークションで見るようなありさまsでしたが、ひっそり帯をかえて誤植を訂正して再販されました。あっという間に一般書店からは消えるかと思いますので即買いです。

TALKS ABOUT NIAGARA(ミュージックマガジン)
こちらも長らく絶版になっていたレコードコレクターズ誌に載っていたインタビューを中心としたムックです。このたび、未掲載のインタビューを加えて完全版という形になって発売が決まったようです。めでたい!

そして、「EACH TIME」の30周年盤も昨年マスタリングが終わっていてインスト盤を加えた形で3月21日に三方背の限定盤で発売されます。(通常盤もあり。)

複雑な思いではありますが、貴重な資料や音源は身近に触れられるこの機会にあらためて足跡を追ってみようと思います。










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2013年この本が面白かった!

年末ですので今年面白かった本を順不同でベスト10(だいたい)選んでみようと思います。去年くらいからはビレッジバンガード下北沢店/ソラハウスの金田さんもおすすめにずいぶんと乗っかっております。ですのでとても効率のいいブックライフを2013年も送ることができました。

*「想像ラジオ」/いとうせいこう
 傑作。芥川賞の受賞を逃した意味がわからないです。小説としての仕掛けも素晴らしいですし、なぜ評判になら ないの かと発売当初思ったのですがじわじわと口コミで広がって芥川賞(候補)効果もあって今書店に平積みになっているのが素晴らしいです。近作も連続で芥川賞候補になりました。読まなくては。

*「流れ星ひとつ」/沢木耕太郎
 意外と評判になっていません。エンタテイメント業界に関係している人はかなり一気に読めると思います。アーティストと言われる人、才能ある人あるあるだらけ。お蔵になっていた理由もちょっと考えてしまうスリリングな1冊です。

*「ここは退屈迎えにきて」/山内マリコ
 これは去年だった気もしますが、、これもあまり評判になっていませんでしたが(じわりいろんな人が言っては いましたが書店からもあっという間に消えてお取り寄せ対象。でもここにきてピースの又吉の推薦なんかで書店で平積みになっています。CDの世界ではあまりない売れ方はうらやましいです。サバービアのイタイ女の子の話 の連作。もっとも次回作が楽しみな新人です。 

*「ドライブ・マイカー」
「イエスタデイ」/村上春樹
 文藝春秋の11月号と12月号掲載の短編です。妄想かもしれませんが、完全にポールの来日のタイミングにあて こんで発表されていて、ビートルズとのリンクがとても巧妙な仕掛けになっています。なんとも言えないディレイ感の短編ふたつです。

*「失踪日記2 アル中病棟」/吾妻ひでお
前作も最高だったのですが、こちらも最高です。かなり悲惨な話の連続なのですが、なんだか逆にこころが温か くなります。ぜんぜん違うのですが中島らもさんの読中感とも似ているかもしれません。

*「本当はこんな歌」/町山智浩
 洋楽の歌詞の本当の意味をひたすら40曲。よくも悪くも誤解しているという日本人ならではの洋楽論を検証してくれます。いろいろな人がサウンドも世界観も引用しているポリスの「見つめていたい」はストーカー気質の人の歌とか(笑)

*「映画宣伝ミラクルワールド」
 独立系配給会社のあの手この手のなんでもありの宣伝作戦の回顧です。「カサンドラクロス」でだまされた(笑)くちとしてはたまりません。音楽の宣伝なんてこれに比べれば良心的かなと(笑)「エレファントマン」。「サスぺリア」(笑)

*「神様がうそをつく」/尾崎かおり
 金田さんの激プッシュで出会った名作。コミックです。1冊完結ですが下手な小説を読むならこちらを。あまり評判になっていないのはなぜでしょうか。

*「リアル」13巻/井上雅彦
 13巻だけしか読んでいません。この1冊でプロレス漫画の傑作として読むことができます。

*ヘドバン/シンコーミュージック
 メタルのムック本なのですが、濃すぎます。たとえるなら初期のクイックジャパンです。十条の古典居酒屋で明らかに僕よりも年上の出版関係のかたがこの本について熱く語っているのが印象的な出来事が先日ありました。渋谷タワー2階でバカ売れしているのも納得です。

*レコードコレクターズ
 こちらは雑誌ですが、特集や興味にかかわらず雑誌として面白いという。今一番好きな雑誌です。

*サウンド&レコーディングマガジン(電子書籍版)
 ちょっと高いのですが、PCやデバイスで読むということで言うと究極のクオリティです。電子雑誌の未来形。
 最初、ちょっと読みずらいかなと思いきやとてもよく考えられています。スゴイ!

*往生際/丸山茂雄
 丸さんのお話を会議やコンベンションや講座で聞くのが楽しみだったのですが、まさにその語り口が堪能できる1冊です。業界裏話といういうよりは闘病記がメインなのですが素敵な語り口で身体に入ってきます。丸さんをご存じの方はもちろん、知らなくてもあの魅力的な語り口を本で体験できるのであります。

残念賞
*タモリ論/樋口毅宏
 大好きな作家の書く大好きなタモリさん論だったのでとても楽しみだったのです。前半の飛ばしっぷりは素晴らしいのですが、後半の失速感も半端ないです。まあ、新書にありがちですが。100ページ勝負!みたいな。

*ファミレス/重松清
 同じ世代の作家さんだし大好きな作家さんでしかも料理がテーマだしとめちゃくちゃ期待して読んだのですが、、、重松清さんはコメディタッチは良いのですが「コメディ」はどうも苦手なのではないかと。すくなくと も僕には合いませんでした。はずれが本当にない作家さんですが、、、レシピの披露もマーケティングなのか
 とちょっとしらけてしまいました。







 
 

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井上雅彦「リアル」13巻を読んだ!

ソラハウス/ビレッジバンガード下北沢の金田さんから井上雅彦さんの「リアル」13巻がその1冊だけで独立したプロレス漫画として読めるという情報をいただきました。

12巻くらいから読み始めて大丈夫ですか?と伺うと、いやいや13巻だけで大丈夫ということでした。

「プロレス内幕もの」は映像に傑作が多くて、半分ドキュメンタリーですがWWEの内幕ものの「ビヨンドザマット」やミッキーローク主演の「レスラー」は本当にプロレスで人生を描いていて、どちらの作品もなんとも言えない大きな感動が長く静かな余韻と一緒に、こみこみでおしよせてきます。人生とプロレスの境い目がなくなるのです。テレビドラマですと「まほろ駅前番外地」の1話のスタンガン西村のエピソードとかも素晴らしい。みえるのはいずれも人生の光と影です。

もともと、総合格闘技になる前の「昭和プロレス」の熱狂的ファンだった僕は、高橋レフリーの暴露本を境にの衰退していくプロレスとそれまでのとてつもなく輝いている栄光の時代の両方をみてきています。八百長なのか、そうではないとかいう、あほらしい議論にかんしては完全にクリアしています。プロレスに大げさでなくイコール「人生」をみてきたのです。

「スラムダンク」や「バカボンド」すらちゃんと読んでいないので井上雅彦さんについては語る資格がまったくないと断言するくらいなにもありません。逆にだからこそ、自分のテリトリーのプロレスに関して書いているのであれば、生半可な描き方だと絶対にいやだなあとエラそうにも思いながら読み始めました。

しかし、完璧に予想はいい意味で裏切られました。先にあげた数々の「プロレス内幕もの」に匹敵する傑作でした。井上雅彦さんはプロレスに触れたのがごく最近だということらしいのですが、なんでこんなにわかるんだというくらいに本質的にプロレスと人間を描いています。本当に半端ない才能のある漫画家なのだというのが、よく知らない僕にでもわかるくらいに圧倒的でした。

ネタばれがありますが下にあげた「見えない道場本舗」というこれも金田さんに教わったブログページですが、こちらが丁寧に解説しています。

で、そのブログに13巻だけ読むのに必要な前知識がありますので、引用させて頂きます。

①悪役の大物レスラー、スコーピオン白鳥が脊髄を損傷して下半身付随になっているが、本人の希望でその状態のままプロレスの試合をする、というとんでもない状況になっている。

②観戦している車椅子の二人は…↓
同室の高橋という若者も同じ障碍者。その事故に遭う前は自分を「Aランク」のエリートだという自負心ゆえに、障害を受け入れられない。もう一人の花咲も障碍者。こちらは以前から劣等感があったことで不思議な障害への諦念があり、そのためもあってリハビリや障害を前提とした体の使い方などが優れている。そして大のプロレスファン、白鳥ファンである

以上の前知識だけで読み始めて大丈夫です。

でも僕も「リアル」を1巻のはじめから読もうと思います。

見えない道場本舗


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村上春樹「イエスタデイ」を読んだ!ネタばれありません。

2013-12-12(Thu)

CategoryREAD
先月号に続いて月刊誌「文芸春秋」新年特別号に村上春樹の新作短編が掲載されました。タイトルは「イエスタデイ ――女のいない男たち2」。

先月号の「ドライブマイカー――女のいない男たち」につづいてビートルズの楽曲のタイトルを冠しています。

しかし「文芸春秋」というのはだれが読んでいるのでしょうか。文芸誌という体裁ですが「アベノミクス」の検証やら昭和回顧、綾瀬はるかのインタビューに三谷幸喜と鈴木京香の対談、ポール観覧記まで。多分僕よりも10歳くらい上の方をメインターゲットとしているのでしょう。

前作の「ドライブマイカー」がビートルズの歌詞を知っているとなおいっそう楽しめるというか、ドキッとする仕掛けがあるのですが、今作はいきなり歌詞がどーんとでてきます。しかもかなり、えっという状態で。

予想ですが、村上春樹さんは前作はポールマッカートニーのライブを見る前に(もちろん来日当日が雑誌の発売日でしたので)そして、今作はライブをみて(イエスタデイを聴いて)これを書いたのではないでしょうか。

締め切りを考えるとちょっと時間が無さ過ぎるので妄想かもしれませんが、歌詞の解釈の仕方にライブ会場で聞いてから書いたような気がふとしました。

さて、ビートルズの曲のタイトルを冠した「女のいない男たち」は連作として今後単行本一冊くらいのボリュームになるのでしょうか。


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